Tuesday, February 4, 2020

1911 平壌日記 「北朝鮮=飢餓の国」という図式を疑うべきこれだけの理由



平壌日記 PYONGYANG DIARY




平壌日記 PYONGYANG DIARY

フォトジャーナリスト・伊藤孝司の朝鮮最新情報

「北朝鮮=飢餓の国」という図式を疑うべきこれだけの理由
「現代ビジネス」(2019年11月8日配信)に執筆した記事を掲載する。

                 ◆

「北朝鮮=飢餓の国」という図式を疑うべきこれだけの理由
稲刈り真っ只中の農村を回ってみたら

■サッカーの試合は取材できず

10月に北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)取材に行った。昨年に続き、今年も年3回の訪朝となった。10日の朝鮮労働党創建74年の祝賀行事と、15日のサッカーW杯アジア2次予選の北朝鮮と韓国との試合を取材するため13日間の滞在となった。

ちなみに、結論からいうと、サッカーの試合の取材は出来なかった。

入国してすぐにこの取材のための申請書類を提出し、記者腕章も渡されていた。私が宿泊している普通江(ポトンガン)ホテルの入口には、この試合のための英文での看板が試合2日前に設置され、盛り上がりを感じていた。

当日の午前10時に、試合会場の「金日成(キム・イルソン)競技場」を見下ろす凱旋門の屋上へ行ってみた。この試合のための看板や装飾はなく不自然に思ったが、ちょうどたくさんの警察官が競技場へ入って行くところだった。それを見て、試合の準備が行なわれていることを確信する。

ところがホテルで待機していた午後3時になり、「一切の取材ができない」との連絡を受けた。競技場の中だけでなく、その前での取材もダメだというのだ。試合そのものは放映権のことがあり撮影しても使用できないため、観客たちを取材する計画だったのだが……。

インターネットで無観客試合だったことをすぐに知ったが、テレビでの中継どころか試合に関する報道は一切なかった。0-0の引き分けになったため、翌日にでも編集したものが放送されるのではと思ったが、それもない。

17日に帰国する際、経由地の北京空港で元北朝鮮代表選手の安英学(アン・ヨンハ)氏を見かけたので声をかけた。すると実に残念そうな表情で「自分たちも競技場に入れなかった」とのこと。

そこまで徹底して試合を無観客にしたのは、米韓合同軍事演習や新兵器導入をする韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権を完全に無視する姿勢を示すためだろう。

■祝日の平壌の街

労働党創建記念日の10日の朝、平壌(ピョンヤン)市内中心部の万寿台(マンスデ)の丘に建つ金日成(キム・イルソン)主席と金正日(キム・ジョンイル)総書記の銅像の前を車で通った。

予想したようにたくさんの人が訪れていて、献花するための花束を販売する出店が並んでいた。

2年ほど前から、地方都市も含め、屋外の最高指導者の銅像や肖像画の前を通過する車は徐行するようになった。こちらとしては撮影しやすくて結構なのだが、「撮るのならば、きちんと撮るように」と案内員からいつも注意される。

新しく建設されたりリニューアルされたりした博物館での展示には、主席と総書記、施設によっては金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長の写真が多用されるようになった。その結果、撮影申請をしても許可が出なくなった(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/66512)。

今回、「朝鮮革命博物館」に取材申請し、カメラを持ち込むことはできたものの1枚も撮影が認められなかった。初めてのことである。

ちなみに、施設内に展示されたり労働党機関紙「労働新聞」などに掲載されたりしている金正恩委員長の写真は、かなりの広角レンズで撮影したものが多い。レンズは広角になるほど背後の状況を多く見せることができ、手前から遠景までにピントを合わせることも可能。そして何よりも遠近感が強調されるため、思い切り人物に近づいて撮ると力強い写真になる。

北朝鮮での取材先は、私が日本からリクエストした場所ばかりである。取材の意図を汲んで用意してくれることはあまりない。ところが今回は、希望を出していなかった「錦繍山(クムスサン)太陽宮殿」へ行くことが決まっていた。

ここは、主席と総書記の遺体が安置されている、この国でもっとも重要な場所だ。木曜日と日曜日には外国人にも公開され、ちょうど祝日と重なったためセッティングされたのだろう。



宮殿には午前9時前に到着した。約150人の外国人は正装しているが、中国人の団体観光客はラフな服装だった。

ハンカチ以外は持ち込めないので、私はクロークにカメラバッグを預け、長い動く歩道を乗り継いで中へ入る。2人の最高指導者の遺体は、荘厳な音楽が流れる2階と3階のホールに安置されている。

およそ1時間後に前庭に出る。ここでは自分の記念写真を撮ることだけが認められており、ビデオ撮影はできない。私は大きな一眼レフカメラを持ち、動き回って撮影していたために注意を受けた。

■仮装して踊る集団

青空が見えてきたので、急いでホテルへ戻る。バーベキューの支度をしてもらい、牡丹峰(モランボン)公園へ向かう。

ここは市内中心部に位置する小高い丘で、行楽シーズンには山火事のようにバーベキューの煙が立ち上る。



案内員たちと肉を焼き始めたものの、私は遠くから聞こえてくるカラオケの音が気になって仕方がなかった。

食事を中断してそこへ行ってみると、いたる所に踊りの輪ができている。その中には、派手な仮装をして踊っている年配の女性たちがいた。それを取り囲むように、外国人も混じった人だかりができているのだ。

女性たちはインド人や中国人、少年団の服装をするなど仮装に工夫を凝らしている。インド人に扮している女性の“髭”は、黒いビニール袋をちぎったものだ。

女性たちに話を聞くと、「住んでいる場所はまちまちだが、ときどき集まって踊っている」と言う。人々に踊りを見てもらうことを生きがいにしているようだ。

公園を奥へ進むと、復元した高麗(コリョ)時代の遺跡でたくさんの人が踊っていた。この場で踊るためだけに作ったと思われるド派手なチマチョゴリを着た女性たちもいる。その様子を200人くらいの人が、斜面に座って楽しそうにいつまでも見ていた。

この国を初めて訪れた1992年にも、こうした光景はあったが、その当時と比べて今は、人々の服装がカラフルでおしゃれになった。そして決定的に異なるのは、スマホで写真や動画の撮影をするのが人々の日常的な行為になっていることだ。

■豊かになった市民生活

北朝鮮は、平壌だけでなく地方都市でも歩道の幅が広いため、自転車専用レーンが増えた。ただ、そこをかなりの速度で走る電動自転車が急速に増えたため、気をつけていないとぶつかりそうになる。昨年からは、大型の電動三輪車をときどき見かけるようになった。

後部座席に2人座れるほど大きいが、エンジンで動かしていないので自転車と同じように歩道上を走行する。咸鏡南道(ハムギョンナムド)の咸興(ハムン)市でも走っていたので、この便利な移動手段が普及するのは間違いない。

個人宅を取材するために「未来科学者通り」へ行き、高層アパート群を歩きながら撮影。ここを車で通り抜けた時には分からなかったが、アパートの下ではたくさんの人たちが様々なことをしているのだ。

ベンチに腰掛けているお年寄りたち、手を組んで歩いている若い男女、完全な防具を付けてローラースケートをしている子どもたち、小型犬を連れて散歩している人たち……。

訪ねた大学教授の自宅には、ピアノや冷凍冷蔵庫があった。これは首都・平壌の最新アパートでの光景ではあるが、この国が緩やかではあれ経済発展を続けているのは確かだと感じた。

平壌市郊外の大城山(テソンサン)西麓にある「中央動物園」へも行ってみた。平日は先生に引率された小学生が多い。爬虫類館には恐竜の頭の双眼鏡があり、子どもたちに大人気だ。



スマホで子どもの写真を撮っていた母親に声をかけると「仕事の夫を残し、咸興から遊びに来た」とのこと。個人でも旅行は出来るが、面倒な移動の手続きもしてくれる旅行社に団体旅行を申し込む人が増えているという。

園内には動物ショーを見せる施設があり人気になっているのだが、今年5月に見ようとしたら入場を断られた。それは今も続いている。「外国人は動物ショーを動物虐待だと非難するから」というのが理由だ。

少し前まで撮影できたものが、次々と不可能になっている。今年7月に夜景を撮った「主体(チュチェ)思想塔」の展望台も、「見学は出来るが撮影は出来なくなった」というのだ。平壌市内の俯瞰撮影をするのに、これ以上の場所はないのだが……。

展望台からは、2ヵ所の石炭火力発電所の煙突からの煙が見える。最近の撮影の際には、それが写らないようにと言われた。そのことが撮影禁止になった理由かと思って煙突を見たが、ほとんど煙は出ていなかった。ひょっとすると次々に押し寄せる中国人観光客が、写真を撮るためにいつまでも動かないからなのかも知れない。

市民たちがどのような食生活をしているのか取材したくて、何度か申請したものの許可が出ない。具体的な店名を挙げて交渉してもダメなのだ。それは、店側が拒否するからなのだという。

新しくできた商業施設でオープン直後は自由に撮影させてくれたところでも、今はまったく不可能になった。「店内で写真を撮った外国人が、帰国後に事実と異なる発表をする」という話が伝わるからだという。



そうした状況の中で、ある総菜売り場を何とか撮影することができた。食卓に欠かすことのできないキムチでさえ、工場で作られたものを買う時代である。総菜を店で買って帰る人も増えたという。

1日に数百人が買いに来るという。その場で購入して持ち帰る人だけでなく、温め直してもらって店内で食べる人もいる。ここの総菜はどれもおいしいので、2日続けて昼食を摂りに出かけた。

■農場での大改革

農地が限られている北朝鮮では、食糧生産は重要な課題である。

今回、稲刈り風景を撮影するため2ヵ所の協同農場へ行ったが、どちらも終了していた。そのため平安南道(ピョンアンナムド)南浦(ナムポ)市にある「青山(チョンサン)協同農場」へ連絡してもらったが、ここも終わったばかりだという。

ただ、そこへ向かう途中ではまだ稲刈りをしているだろうとのことで、平壌市から南西へ車を走らせる。南浦市までは「青年英雄道路」という片側4車線の高速道路がある。だがここを走っていては、農作業を間近で撮影することは出来ない。

そのため運転手の提案で、脇道を走ることになった。未舗装なのだが、手入れされているので大きく揺れることはない。ただその道を行き来する人にとっては、車が巻き上げる砂ぼこりが大変である。



「青山協同農場」内の文化会館ではちょうどこの日、地域の「機動芸術宣伝隊」が全国のコンクールで優勝したことを記念する公演が開かれていた。この宣伝隊は、田植え・草取り・稲刈りの時期などに農場を回り、屋外で歌と演奏をする。日焼けした農場員たちが、交代で会場へやってきた。

黄金色に輝く刈り取り前の水田を見つけて撮影ができた。そして、稲刈りが終わった水田には天日乾燥させるために稲穂が積み上げられ、乾燥の終わったものを大型トラクターで運び出している。



稲刈り風景など簡単に撮影できると思っていたが、実に手こずった。それは、この国の農業制度の改革が関係している。

2014年2月の「全国農業部門分組長大会」へ金正恩委員長が書簡を送り、「圃田(ほでん)担当責任制」の導入を宣言。「分配における平均主義は農場員の生産意欲を低下させる」として、労働に応じて分配での差別化をはかることが明確にされたのだ。

協同農場には作業班があり、その下に20~30人の分組がある。この分組において農場員に耕作地を割り振り、そこでの成績を評価して収穫物を分配するのである。この制度によって農場員たちの“やる気”は一気に高まった。

しかも、田植えや稲刈りなどの農作業を少しでも短期間に終わらせるための競争をしている。早く終われば、次の作業に取り掛かることができるからだ。稲刈りに合わせて取材日程を立てたつもりだったのに、どの農場も作業を一気に終わらせてしまったのだ。農作業中の人たちにインタビューしても、誰もがその手を止めようとしない。

家族が担当している水田へ入れるための堆肥を、自宅の庭で作っている家も多いという。この制度によって農場員の収入は「青山協同農場」では120%、黄海北道(ファンヘブクド)沙里院市(サリウォンシ)の「嵋谷(ミゴク)協同農場」は130%に増えたという。

■豊作か凶作か

「青山協同農場」の脱穀場で、作業をしているというので急いで向かう。

稲穂の山が次々とトラクターで運ばれて来る。訪ねた3ヵ所のどの農場でも「台風被害はあったものの、今年は昨年よりも豊作」と聞いた。

また、「社会科学院経済研究所農業研究室」の金光男(キム・グァンナム)室長は「今年は不利な天候だったが収穫量は増えた。山間部でも最高の収穫」と語る。

ところが先ごろ、「国連食糧農業機関(FAO)」が「北朝鮮の穀物生産量は5年ぶりの最低水準」との報告書を発表。10月23日の国連総会人権委員会では、トマス・オヘア・キンタナ北朝鮮人権担当特別報告者は「経済・農業政策の失敗により、人口の約40%にあたる1030万人が栄養失調で、3万人の子どもが死の危険に直面している」と報告している。



私は以前から、北朝鮮の食糧事情に関する国連機関の報告は、実態とかけ離れているのではないかと思ってきた。それらの機関が地方で十分な活動ができないため実態を正確に把握できず、過大な数字を出しているのではないだろうか。

その結果、「北朝鮮=慢性的な飢餓の国」というイメージが定着してしまった。このことは、北朝鮮を冷静かつ客観的に捉えることを大きく妨げている。

(写真はすべて筆者撮影)

2020-01-28 :
平壌 :
Pagetop

朝鮮取材の「ガイアの夜明け」は今夜放送!
私が企画・取材し撮影もした「ガイアの夜明け」の編集作業は、20日夜に無事終了。構想から2年。いよいよ今夜(21日)午後10時から、テレビ東京系列で放送です。


平壌の「中央動物園」で、恐竜の頭の双眼鏡をのぞく子どもたち(2019年10月15日撮影)

「謎の隣国…北朝鮮潜入〜経済制裁下で独自取材!〜」とタイトルはセンセーショナルですが、朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)の農場や工場での大胆な試みと日本人妻の新取材を紹介する内容です。

朝鮮取材の多くは私一人で取材交渉をし、ビデオカメラを回しながらインタビューし写真も撮っています。つまり、ディレクター・記者・ビデオと写真の撮影という4役をしているのですが、この取材ではディレクターやビデオカメラマンの同行許可が得られたため、余裕のある取材ができています。

そして、この番組のために時期を変えて3回にわたり38日間の取材をしているため、初めて撮影できたものもたくさんありました。ですが、編集作業で削らざるを得なかった映像が多かったのが残念です。

番組の感想をぜひともお寄せください。

=放送日・時間=
<1月21日午後10時からの地上波放送>
テレビ東京/テレビ北海道/テレビ愛知/テレビ大阪/テレビせとうち/TVQ九州放送/岐阜放送/びわこ放送/奈良テレビ/テレビ和歌山

<1月21日以降の地上波放送>
中国放送 2/2 25:25~
三重テレビ放送 2/5 22:15~
信越放送 2/15 16:00~
熊本放送 2/23 10:30~
南海放送 3/1 16:30~
北日本放送 3/8 09:55~
テレビユー山形 3/8 24:50~
北陸放送 3/29  24:50~
日本海テレビジョン放送 5/10 16:30~

<BSテレ東の放送>
2/3 20:00~

<日経CNBCの放送>
2/1 12:00~


2020-01-21 :
お知らせ :
Pagetop

朝鮮経済・日本人妻の取材を「ガイアの夜明け」で放送
朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)で、昨年3回、延べ38日間かけて取材した朝鮮経済と日本人妻を、1月21(火)にテレビ東京系列「ガイアの夜明け」(22:00~)で放送します。


牡丹峰(モランボン)公園で仮装して踊る年配女性たち(2019年10月10日撮影)

タイトルは「謎の隣国…北朝鮮潜入〜経済制裁下で独自取材!〜」とセンセーショナルですが、時間をかけた取材を丁寧に編集しています。

経済取材の計画を立てたのは2年前。それから朝鮮のさまざまな機関と交渉を続け、市民生活だけでなく農場・工場・施設など合わせて28カ所を取材しました。

日本人妻の取材では、昨年に続いて熊本在住の妹の、咸興(ハムン)で暮らす姉の中本愛子さん訪問に同行。中本さんの孫息子の、結婚式の一部始終も撮影しました。

国連安保理などによる厳しい制裁を受けながらも、緩やかな経済発展をしてきた朝鮮。それは、金正恩(キム・ジョンウン)委員長による大胆な改革によるものでした。

2020-01-13 :
お知らせ :
Pagetop

朝鮮のICBM発射に期待する日本人とは
これを書いている25日午後3時現在、朝鮮からのICBM(大陸間弾道ミサイル)の試験発射などは行なわれていない。今月3日、朝鮮外務省の米国担当次官が「クリスマスプレゼントを何にするかは米国の決心次第だ」と表明。


「凱旋門」から見た平壌(ピョンヤン)市内(2019年10月15日撮影)

それに対して、日米韓などのメディアは、ICBM・衛星ロケットの発射や核実験の再開の可能性があるとしてきた。米国のトランプ大統領は24日、「我々は何がサプライズなのか把握した上で極めてうまく対応する」として、朝鮮がICBMを発射した場合は「どうなるかみてみよう」と牽制した。

日本や米国には、朝鮮半島での軍事衝突や戦争に“期待”している企業が多くある。それは軍需産業である。今月初めから石川製作所(機雷)・豊和工業(自動小銃・迫撃砲)などの株価が急上昇。石川製作所は、「クリスマスプレゼント発言」前は1300円台だったのが、23日には2100円にもなった。

1950年6月に始まった朝鮮戦争で「国連軍」最高司令官のマッカーサーは、占領下の日本を戦争遂行の巨大な兵站基地にした。米軍などによる物資の大量買い付けによって、日本の企業は軍需産業を中心に「朝鮮特需」と呼ばれる膨大な利益を得た(詳しくは拙著『朝鮮民主主義人民共和国 米国との対決と核・ミサイル開発の理由』参照)。

米軍からの直接調達が約10億ドル、間接的なものが約36億ドルといわれている。その商行為によって、どれほどの朝鮮人が殺されたのだろうか。まさしく「死の商人」である。こうした歴史があるため、再び「朝鮮有事」に期待しているのだろう。

朝鮮は2017年元旦の金正恩(キム・ジョンウン)委員長による新年の辞によって、核・ミサイル実験の停止を明確にし、それを今まで守ってきた。だが一方の米国は米韓合同軍事演習を縮小しただけである。

この緊迫した状況を打開するには、朝鮮が実施した措置に見合う対応を米国が行なうことだろう。それは、制裁の段階的緩和を開始することしかない。

2019-12-25 :
日朝 :
Pagetop

ドイツと日本の違い、そして朝鮮へは
12月6日、ドイツのメルケル首相(65)が、ナチス・ドイツがポーランドに設けた「アウシュビッツ強制収容所」の跡を公式訪問した。ドイツの現職首相として訪れたのは3人目。ガス室や遺体焼却炉などを見て回った後、現地で演説した。

メルケル首相はナチス・ドイツによる犯罪について、「記憶しておくことは、我々の終わることのない責任。この歴史の解釈を変えてはならない」と表明。過去を直視し続ける重要性を語った。

首相はまた、ドイツでユダヤ人などへのヘイトクライムが拡大していることに対し「反ユダヤ主義に立ち向かうには収容所の歴史が語られ、この記憶が生かされ続けることが求められている」とした。

この訪問は、日本でいえば安倍晋三首相が中国の「南京大虐殺記念館」や各地にある万人抗、韓国で性奴隷被害女性が暮らす「ナヌムの家」を訪れることと同じである。だがそのようなことは、今の日本の状況ではまったく考えられない。ドイツが日本と大きく異なるのは、自国の“負の歴史”に正面から向き合おうとしていることだ。

それと比べ日本の安倍氏は、朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)への徹底した攻撃によって首相の座を得て政権維持に利用してきた。朝鮮への独自制裁の一環として在日朝鮮人の朝鮮渡航を大幅の制限し、朝鮮高校・幼稚園を無償化から除外するなど、考えられる限りのさまざまな措置を実施。

こうした安倍政権の朝鮮への極端な敵視によって、日本国内に朝鮮だけでなく韓国や中国に対する民族排外主義的な雰囲気をすっかり定着させてしまった。そればかりか、日本軍がアジアの女性たちを性奴隷にしたことや、南京などで住民を集団虐殺した疑う余地のない歴史的事実の歪曲がまかり通るようになった。

こうした日本の異常な状況は今、朝鮮や韓国との深刻な関係悪化を招いている。しかも近隣諸国との歴史認識の溝がさらに深まれば、将来の関係は極めて深刻になるのは確かだ。


東京の「大倉集古館」に展示されている「平壌栗里寺址八角五重石塔」(2006年10月12日撮影)

12月4日の「朝鮮中央通信」は「時代と歴史の流れに対する挑戦は容認されない」との論評を掲載した。

「今年に入って、英国がエチオピアに文化遺物を返還し、ドイツがイタリアで働いたナチス部隊の民間人虐殺蛮行に対して公式謝罪したし、先日はフランスが19世紀にセネガルで略奪した文化財を返還した。これは、罪悪の轍を踏まないというこれらの国の意志の発現であると同時に、過去問題の解決で国家間の和解と新たな関係発展を図っていく現国際的流れを反映したものである。しかし、地球上にはそれに歩調を合わせるどころか、正反対に向かう厚顔無恥な国がある。他ならぬ、日本である」

そして、日本が植民地支配下の朝鮮半島で行なった文化財略奪の具体例を示し、「官権と軍権の総発動の下に朝鮮民族を完全に抹殺する目的の下で強行された特大型国家犯罪行為」として厳しく批判している。

日本はアジア諸国を侵略したことへの深い反省の上に立ち、被害を与えたことへの誠意ある謝罪を行ない、未解決の課題を早急に清算するべきだ。このことは、日本の未来にとって必要なのである。

2019-12-07 :
日朝 :

No comments:

Post a Comment